家康視点多し。
特に記述が無ければ、関ヶ原になります。他武将も登場する場合には割合が多ければ記述。
関ヶ原、主に家三で小説、たまに絵。史実ネタとその逸話からの独自解釈、捏造改変など混ぜてたり。
基本はゲーム設定に色付け。男前が目標。シリアスで戦国設定濃い目。転生、現代あり。
合戦描写が好きな管理人です。



   黒点   
家康は日々を多忙で極めていた。戦後処理が終わっても新たな仕組みを一から定める必要があるからだ。細やかな制度を綿密に組み上げ、それを仕切る役人と権限、掟を編んだ。

脳内を巡るのは三成の事。このような政は三成であればいとも簡単に成していただろうに。

いかん、と軽く頭を振って、眼前の山河となった書を見やる。気を抜くと直ぐに三成の事で頭が一杯になって、挙句呼吸もままならなくなる。何度苦しい思いをした事か。

周囲が驚く程、家康は精力的に政を行ったが、それは単に家康の目指す泰平の世を作る為だけでは無く、何かをしていなければ気が狂いそうだったからだ。

秀吉を討った後も幾度も自分に言い聞かせ、自分を騙せるようになってきたと思っていたが、ちっともそうでは無かったらしい。むしろ、日に日に三成への思いが募るばかりだった。

睡眠も食事もそこそこに毎日を忙しなく過ごしたお陰か粗方の枠組みは出来てきた。
後は、その都度細かい修正を加えていけばいい。

国の基礎作りへの焦りと三成への想いが混ぜ込ぜになり、心身が悲鳴を上げている。
晴らす事の出来ない鬱憤は劣情となりまた熱を吐き出すしか己を保つ事が出来ないでいた家康は跡取り相続の名目で適当に女を抱いてみるのだが特にこれと言った感情は湧いて来なかった。女を抱けば抱くほど己に失望するのである。

(ああ・・・やはり駄目だなあ)

誰に呟くでも無く、人気の無い執務室で大きな溜息を付いた。

部屋の隅に目が行く。

そういえば、気晴らしによく鷹狩りをしていた。道具を見てようやく思い出した。

「近頃は、鷹狩りもしていなかったか」

勿論優秀な鷹匠も未だ雇ったままであり、何羽も優れた鷹も有していた。だがそれらは、鷹狩を好みとした大名への土産として与えるばかりで家康自身は鷹狩への関心が回っていなかった。

立ち上がって、肩を解す。戦が終わって久しく、健康の為の早朝の運動以外は部屋に篭もりきりで身体の節々が痛い。

「政も一段落した事だし、外に出ても良いだろう」

換気は良くされてはいるが、それでも篭もりきりは良くない。

「鷹狩に出掛けて来る」

家康がそう告げれば、直ぐ様鷹の準備がなされた。

着飾った馬を前にして、一瞬考えこんだ家康だったが、一つ頷いて馬に跨る。

馬の背に揺られても鷹は微動だにせず家康の左手に止まっていた。






共を連れる事なく一人で狩場へとやって来た家康は鷹を放して、ぼんやりと空を眺める。

今跨っている愛馬は透き通るような白い毛を持つ騎馬。戦をする事もなくなり、戦で目立つ毛色の馬を多用するのも差し支えない今は敢えて目立つ毛色の馬を用意させた。




ピォ―――――――――――――と甲高い鳴き声が上がる。

家康の思考が戻る。

鷹が家康の方へ向かって来た。
中空で旋回して、大きく左へ楕円を描いてゆっくりと奥へ羽ばたいて行く。獲物を見付けたようだ。
家康は一本の白羽の付いた矢を番えて放つ。
ひゅん、と小気味良く風を切って飛んだ。
鷹が急上昇した真下に矢が到達して獲物が落下する前に鷹が拾い上げる。そのまま家康の元へ鷹が舞い降りて来る。
見事に首を握力で握り潰して来ていたのを目にして顔が歪む。なるべく見ない様にして、鷹の足から獲物を外す。家康の目に銀の環が写る。そこに刻まれているのは『三刃(みつば)』。鷹にしては珍しく白い羽根が多い。その上に瞳は暗緑色。鋭い様でいて澄んだ姿にいてもたってもいられず、出会った瞬間にその場で名付けたものだ。






こうして繰り返し白い馬と白い鷹を連れて鷹狩に足を運んだ。


家康はふと周りの景色を改めて見た。

「あれ・・・?なぁんだ・・・そっかあ・・・」

意図せず調度良いところで狩りに勤しんでいたと思っていた。だけれども。良く良く見れば、どこも見た事がある景色ばかり。

「ここも・・・あそこも・・・良く、三成と遠乗りに来ていたっけな・・・ぁ?」

風に乗って心地の良い玲瓏と響く低音で己の名を呼ばれた気がした。

事実を自覚した家康は、昼間は尚の事時間の許す限り鷹狩を続けたのだった。
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