家康視点多し。
特に記述が無ければ、関ヶ原になります。他武将も登場する場合には割合が多ければ記述。
関ヶ原、主に家三で小説、たまに絵。史実ネタとその逸話からの独自解釈、捏造改変など混ぜてたり。
基本はゲーム設定に色付け。男前が目標。シリアスで戦国設定濃い目。転生、現代あり。
合戦描写が好きな管理人です。



   黒点   
戦後処理をあらかた済ませたところで、家康へ跡取りの為の縁談が持ち上がる。

家臣に三成の事は明かす事などしない家康だったが家康にとって三成の存在は大きく、時折ぼんやりと空を眺める家康の姿を見かねた家臣たちが心配をしだしたのだ。

「家康様。ここのところお疲れでございましょう。政務も落ち着いて参りましたし、そろそろ、奥方を娶っては如何でございましょうか」

生憎、家康には元々女を囲う趣味はない。女を抱いた事も多かったが、織田傘下や豊臣傘下の時代、また三成と対立するようになって兵を集める際の人付き合いとして人から勧められた女だけ気乗りしないが抱いただけだ。
気立てが良いだとか、美女だとか、風評立つ女も家康にはどうでも良かった。女に興味を持てないからと男色に手を出した事も無い。

(三成だけ)

家康は角が立たないようにやんわりと断って来たが、家康の心が晴れないのも事実。家臣に要らぬ心配をさせるのも、断り続けては家臣との意思の疎通を欠く事になる為避けたい。
家臣から輿入れに来る女人の家柄を聞かされる。頭の隅に朧気にある家系図を展開させて、適当に返事をする。
とんとんと縁談が決まった。婚儀の最中に自分が何を口にしているのか良く分からない。
長い人質生活から自然と処世術が身体に叩き込まれたお陰で無意識に言葉が出ている。

特定の正室は持つ気になれなかった。どうせ、どの女も三成の代わりにすらならない。だから家康は側室だけ承知した。

「家康様。此度の奥方様のご懐妊、真にお目出度う御座ります」

「ん?ああ・・・」

日課の薬草の仕分けに没頭していた家康はそう家臣に言われる迄気に留めていなかった。

だが、外面の作り方なら心得ている。脳内で暗い思考を潰す。足元の池の中の己の顔は少なくとも嬉々とした造形をしている。鏡代わりに庭園に造らせたとこの大きな池の意図を知ったらどうなるやら。とにかく、家臣にはにかんでおく。家臣たちは全く気付く様子も無い。知らせるつもりもないが。

生まれたのは男子だった。普通の感覚であれば喜ぶべき事。生まれて間もない我が子を見てみるがとても自分の子だと思えない。恐ろしく他人事にしか感じ無い。

「男子を産んでくれて感謝する。しばらくゆるりと休んでくれ」

笑顔を見せて助産婦たちに会釈する。表向きは出産を終えたばかりの側室への配慮。その裏は、単にその場に長居したくないだけ。最低限の言葉を交わしたら自室に篭もりたい。

廊下を曲がって誰も視界に入る事が無くなった途端に表情が消える。疲れた。休みたい。

自室に戻ってきて、後ろでに襖を閉める。

先程握りしめた女人の手。あれよりはしっかりとしてはいるが美しい手だったな。

(三成・・・。死なせる事さえ無ければ今頃は・・・)

家康は力無く座り込む。脇息に凭れる。懐に手を置いた。袷の下に三成の銀糸の髪を一房忍ばせてあった。
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