家康視点多し。
特に記述が無ければ、関ヶ原になります。他武将も登場する場合には割合が多ければ記述。
関ヶ原、主に家三で小説、たまに絵。史実ネタとその逸話からの独自解釈、捏造改変など混ぜてたり。
基本はゲーム設定に色付け。男前が目標。シリアスで戦国設定濃い目。転生、現代あり。
合戦描写が好きな管理人です。
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特に記述が無ければ、関ヶ原になります。他武将も登場する場合には割合が多ければ記述。
関ヶ原、主に家三で小説、たまに絵。史実ネタとその逸話からの独自解釈、捏造改変など混ぜてたり。
基本はゲーム設定に色付け。男前が目標。シリアスで戦国設定濃い目。転生、現代あり。
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一
隔靴掻痒 かっかそうよう ●揺籃
三成と家康が共に行軍をしていた。
三成の軍が先行し家康の軍は後ろに控えている。
地平から太陽までの高さを見て昼餉の時間にしても良い頃だろう。
そんな事を考えていると待機を知らせる合図が響く。いそいそと暑苦しい甲冑を脱ぎ捨て腰袋から干飯を取り出して食事の準備を始める足軽たち。
家康は豊臣に下っても徳川の殿である。家臣が真っ先に食事を用意し持ち運んでくれるのだが、家康の頭の中には三成の事唯一つ。
「すまない。ちょっと用事があるので昼餉は後で頂くよ。儂の事は大丈夫だから皆、先に食事にしてくれ。ゆっくり休むんだぞ?」
朗らかにそう言うと家康は家臣たちに手を緩く振りながら前へ歩いていった。
家康は連なった紫の旗の先頭を目指す。
簡素に建てられた陣幕に近付く。
「刑部、用意出来たぞ」
陣幕の向こうに居た三成は、木匙で汁物を口にしていたが家康の視線を感じて鋭い視線で家康に向く。
「何の用だ家康」
食を滅多に取らない三成が食事の前に進んでいた事に呆気に取られたと同時に嬉しくなる。が、それも束の間、器を刑部に手渡すだけで自らは立ち上がってしまう。
「刑部、また後で来る」
その場から立ち去ろうとする三成。
「あ、おい三成」
食事は・・・と言い続けるが要らん、とだけ告げ去ってしまう。
座ったままの刑部は溜息を付いた。
「三成はこうと決めたらなかなか頑固よ。我も幾度も食事をせよと言い聞かせてもロクに食事を摂らぬ。その癖アレは我に食事の用意なぞしやる」
そう言って刑部は三成が用意したという食事に目を落とす。家康はその椀を見た。良い匂いがする。
腹の虫が鳴った。そういえばまだ食べていなかったな。
「徳川よ、主は未だ食事をせなんだか。食うてみやるか」
刑部は家康に器を差し出す。家康は二つ返事で受け取る。
「・・・美味い」
「不思議であろ。アレは存外料理も得意であるのよ」
「大谷殿。三成は何故あんなにも食事をしないのだろうか」
直ぐに三成を追い掛けたい家康ではあったが三成がこの場に居ない今こそ三成の事を聞く機会と踏んだ家康は刑部に尋ねてみる事にした。
「そうさなあ・・・。主に話して良いのやら。三成が知ったら我が三成に舌を抜かれかねぬ」ひひひ、と薄気味悪い笑いを浮かべる刑部。
「まあ、我も三成には食事を摂って欲しいとは常日頃思うておるから徳川にも参考までに話しておくが良かろ。アレの母親はアレに似て、というより母に似て美しいと言ったところか。美しいだけでなく気立ても良く何でもそつなくこなす優れた母であったと聞いておる。その母が存命の頃は母が出した食事も残す事なく母に尽くしておったとも聞いておる」
刑部はそこで一旦話を区切る。
(三成は幼い頃はきちんと食事をしていたのか。では何故?)
家康は先を促す様に刑部を見る。
「アレの母親はアレが4つの頃に、殺されおった。アレの目の前でな。アレが言うには、母の為に薪を取りに行き外から帰って来た時だったと。山賊どもが三成の目先で母の腹を割き、臓物が囲炉裏にあった鍋にぶちまけられた」
刑部は目を伏せる。
「だが、ここで異様なのは、三成は、その母の血肉が混じった汁物を平らげた。三成は大層怒りに煮えたぎっておったそうだ。力の無い童では復讐は叶わず撤退する山賊どもの足にも追いつけん。三成なりに、母が最後に用意した食事くらいは食する事を選んだと思うのだがその日を境に周りを信じず冷たい眼差ししか出来ない童は歓迎出来よう筈もなく、寺に預けられたと言う。人が信じられず人が用意した食事の殆どを口にしなくなった三成だったがそれが幸いしてか寺での衣食住には不服には感じていなかったそうだ。寺に預けられてしばし教養と修練に没頭したと言う」
「・・・・・・」
「寺で太閤殿に見出され寺から出た三成は、真っ先に母殺しの山賊どもを皆殺しにしたと言っておったな。太閤殿に仕える前に母への仇は済ませたかったのであろう。仇を討った以降は母への想いは終いとなり、三成は太閤へ熱心に仕えた。主も知っての通りに三成は優秀よ。だがアレは太閤と僅かな者しか心を開かぬ故、三成自身への妬みから毒を盛られての。殊更食が細くなったという訳よ。三成にはいつでも戦で果てる覚悟はあるのだが、それ以外で死ぬる事は恥だと思うておる。生きるに最低限の食事以外は拒絶しよる」
三成の食への意識の根源が分かってしまった。食事の楽しみを奪われ、生命も脅かされたとなれば食事を極力避けたいと思うのも無理はない。
だが三成は生きている。
食事を断って死ぬ事を考えてはいないのだ。何か方法はある筈に違いないと家康は考える。
「三成・・・」
「徳川よ。我がこの事を話したのは、主にも多少なりと似た部分があるやも知れぬと思うたから参考に話した迄の事。くれぐれもアレには言うてくれるな」
「承知した。大谷殿、感謝する」
家康は陣を後にする。
「さて」
三成はどこに行ったのだろう。
人気の無いところに目をやる。離れたところに林があった。多分あそこだろう。
家康は林に向かった。
三成の軍が先行し家康の軍は後ろに控えている。
地平から太陽までの高さを見て昼餉の時間にしても良い頃だろう。
そんな事を考えていると待機を知らせる合図が響く。いそいそと暑苦しい甲冑を脱ぎ捨て腰袋から干飯を取り出して食事の準備を始める足軽たち。
家康は豊臣に下っても徳川の殿である。家臣が真っ先に食事を用意し持ち運んでくれるのだが、家康の頭の中には三成の事唯一つ。
「すまない。ちょっと用事があるので昼餉は後で頂くよ。儂の事は大丈夫だから皆、先に食事にしてくれ。ゆっくり休むんだぞ?」
朗らかにそう言うと家康は家臣たちに手を緩く振りながら前へ歩いていった。
家康は連なった紫の旗の先頭を目指す。
簡素に建てられた陣幕に近付く。
「刑部、用意出来たぞ」
陣幕の向こうに居た三成は、木匙で汁物を口にしていたが家康の視線を感じて鋭い視線で家康に向く。
「何の用だ家康」
食を滅多に取らない三成が食事の前に進んでいた事に呆気に取られたと同時に嬉しくなる。が、それも束の間、器を刑部に手渡すだけで自らは立ち上がってしまう。
「刑部、また後で来る」
その場から立ち去ろうとする三成。
「あ、おい三成」
食事は・・・と言い続けるが要らん、とだけ告げ去ってしまう。
座ったままの刑部は溜息を付いた。
「三成はこうと決めたらなかなか頑固よ。我も幾度も食事をせよと言い聞かせてもロクに食事を摂らぬ。その癖アレは我に食事の用意なぞしやる」
そう言って刑部は三成が用意したという食事に目を落とす。家康はその椀を見た。良い匂いがする。
腹の虫が鳴った。そういえばまだ食べていなかったな。
「徳川よ、主は未だ食事をせなんだか。食うてみやるか」
刑部は家康に器を差し出す。家康は二つ返事で受け取る。
「・・・美味い」
「不思議であろ。アレは存外料理も得意であるのよ」
「大谷殿。三成は何故あんなにも食事をしないのだろうか」
直ぐに三成を追い掛けたい家康ではあったが三成がこの場に居ない今こそ三成の事を聞く機会と踏んだ家康は刑部に尋ねてみる事にした。
「そうさなあ・・・。主に話して良いのやら。三成が知ったら我が三成に舌を抜かれかねぬ」ひひひ、と薄気味悪い笑いを浮かべる刑部。
「まあ、我も三成には食事を摂って欲しいとは常日頃思うておるから徳川にも参考までに話しておくが良かろ。アレの母親はアレに似て、というより母に似て美しいと言ったところか。美しいだけでなく気立ても良く何でもそつなくこなす優れた母であったと聞いておる。その母が存命の頃は母が出した食事も残す事なく母に尽くしておったとも聞いておる」
刑部はそこで一旦話を区切る。
(三成は幼い頃はきちんと食事をしていたのか。では何故?)
家康は先を促す様に刑部を見る。
「アレの母親はアレが4つの頃に、殺されおった。アレの目の前でな。アレが言うには、母の為に薪を取りに行き外から帰って来た時だったと。山賊どもが三成の目先で母の腹を割き、臓物が囲炉裏にあった鍋にぶちまけられた」
刑部は目を伏せる。
「だが、ここで異様なのは、三成は、その母の血肉が混じった汁物を平らげた。三成は大層怒りに煮えたぎっておったそうだ。力の無い童では復讐は叶わず撤退する山賊どもの足にも追いつけん。三成なりに、母が最後に用意した食事くらいは食する事を選んだと思うのだがその日を境に周りを信じず冷たい眼差ししか出来ない童は歓迎出来よう筈もなく、寺に預けられたと言う。人が信じられず人が用意した食事の殆どを口にしなくなった三成だったがそれが幸いしてか寺での衣食住には不服には感じていなかったそうだ。寺に預けられてしばし教養と修練に没頭したと言う」
「・・・・・・」
「寺で太閤殿に見出され寺から出た三成は、真っ先に母殺しの山賊どもを皆殺しにしたと言っておったな。太閤殿に仕える前に母への仇は済ませたかったのであろう。仇を討った以降は母への想いは終いとなり、三成は太閤へ熱心に仕えた。主も知っての通りに三成は優秀よ。だがアレは太閤と僅かな者しか心を開かぬ故、三成自身への妬みから毒を盛られての。殊更食が細くなったという訳よ。三成にはいつでも戦で果てる覚悟はあるのだが、それ以外で死ぬる事は恥だと思うておる。生きるに最低限の食事以外は拒絶しよる」
三成の食への意識の根源が分かってしまった。食事の楽しみを奪われ、生命も脅かされたとなれば食事を極力避けたいと思うのも無理はない。
だが三成は生きている。
食事を断って死ぬ事を考えてはいないのだ。何か方法はある筈に違いないと家康は考える。
「三成・・・」
「徳川よ。我がこの事を話したのは、主にも多少なりと似た部分があるやも知れぬと思うたから参考に話した迄の事。くれぐれもアレには言うてくれるな」
「承知した。大谷殿、感謝する」
家康は陣を後にする。
「さて」
三成はどこに行ったのだろう。
人気の無いところに目をやる。離れたところに林があった。多分あそこだろう。
家康は林に向かった。
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