家康視点多し。
特に記述が無ければ、関ヶ原になります。他武将も登場する場合には割合が多ければ記述。
関ヶ原、主に家三で小説、たまに絵。史実ネタとその逸話からの独自解釈、捏造改変など混ぜてたり。
基本はゲーム設定に色付け。男前が目標。シリアスで戦国設定濃い目。転生、現代あり。
合戦描写が好きな管理人です。



   天陽   ●揺籃
「竹千代。お前は大きくなったら、この三河を統べるのだぞ」

早う大きくなれ、と。
誰からも愛された。
己もそうであるように務めた。
その侭何事も無く当主となれるだろうと思われた矢先の事。
父が母と離縁したのだ。

「何故ですか!!!父上!母上!!!」

父は厳しい目をしていた。母は悲しんでいた。
少なくとも、幼くても自分の目には離縁するなどとは夢にも思えない。

「それが戦国の世の常なのだ竹千代」

説明は受けた。だが、そんなの、納得出来る訳が無い。
好き合っているのに。
そんなのが罷り通るのか。

「お前も大きくなったら、分かる」

父がとんでも無い事を言う。

(なんだって?!そんな事はあってたまるか!)

口に出せる事では無い事だと認識出来る年にはなっていたが。
それが故、悲しくて苦しくて。

(・・・ならば、ワシが、そんな世にさせない。させてなるものか!)

幼い己を呪った。早く大きくなりたい。

悲しくて飛び出した。
認めない。認めたくない。
走った。
直ぐに息が上がる。
肺が潰れそうになる。
それでも走らずにはいられない。

足が痙攣する。
棒の様になる。
引摺る様にして走る。

どちらを向いているのかも分からなくなる。

限界が訪れて遂に止まる。
地に倒れた。
痛みは感じる事が無かった。
心が空洞。
起き上がれない。

目の前に蒲公英。
踏まれてぼろぼろになっていた。

ぼんやりと見詰める。

どんなに思っても踏み躙られるものだと。

目が霞む。

透明の雫が溢れる。
頬を伝う。

塩辛い。

熱い。
陸に打ち上げられた魚の様に喘ぐ。

何もかもがどうでも良くなる。

頬に何か当たった。
上から落ちてきた。
ぽつりと。
冷たい。
雨が降って来た。
大降りに変わる。
全身を雨が打つ。
泥が顔に跳ねた。
拭うのもしんどい。
汗をかいた身体が一気に冷える。
まともな思考に戻らない。

(此の侭・・・)

思う通りに行かないのであれば、と不穏な事を思う。

疲れた。

自分では無くとも良い気がした。
弟達も居るのだ。

そう思うと笑えた。

(本当に、どうでも良い)

父が言っていた。―――質に出すのだと。
自分は居なくて良いのだろう。要らないから出すのだろうと。
体の良い厄介払いなのだと。

全身を打つ雨を受け入れた。
眠くなる。

(終わりに出来る)

目を瞑った。

雨音しか捉えていなかった耳に金物の音がした。
感覚が無くなっていた。
目を開ける。
真っ暗だ。
否。―――山のような武人が居た。
甲冑を見に纏っている。
自分を見ていた。
何故。
霞がかった頭で考える。
持ち上げられる。
両手で包まれていた。

「どうして」

「――――――」

武人は答えない。

「お前の名は・・・忠勝、だったか」

戦国最強と称される武人。
各国から羨望される武将。

「ワシに付いても、期待は出来んぞ?」

「・・・・・・・・・」

「・・・それはワシでなくとも良いだろう?」

「・・・・・・・・・」

頬が熱くなった。
大きな手。
無言で竹千代を受け止める。

嗚咽が漏れた。
咽る。
卑下した自分に手を差し伸べてくれた事。
つまらない背伸びをした。
恥ずかしい。
自分が子供だと恥じた。

「・・・・・・・・・」

「うん・・・うん」

雨と共に陰鬱な気分を流していく。
降りしきる雨の中ならば。
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