家康視点多し。
特に記述が無ければ、関ヶ原になります。他武将も登場する場合には割合が多ければ記述。
関ヶ原、主に家三で小説、たまに絵。史実ネタとその逸話からの独自解釈、捏造改変など混ぜてたり。
基本はゲーム設定に色付け。男前が目標。シリアスで戦国設定濃い目。転生、現代あり。
合戦描写が好きな管理人です。



失った世界で

   <桎梏(しっこく)>  ●螺旋   
東軍の勝利に皆が沸き立つ。

だが儂の心は沈んだまま。

何故なら、最愛の人を自らの手で落としたからだ。

身動き一つしない三成を前にして、儂は吐き気と悪寒と眩暈がした。
自分自身に憎悪さえ沸き起こる。

こちらに寄って来る家臣たちを拒絶して下がらせる。

静かになったその場で力なく腰を落とした。

三成の顔を見る。意外と安らかな死に顔に、儂はやるせない気持ちに吹き荒れていた。

どうして殺してしまったのだろう。

三成が刀を納めないから?違う。儂の力であれば刀など振り払える。







三成の目が、声が儂の全てを拒否していたから?そんな事はとうに分かりきっている。

それなら、どうして?



三成が喜ぶのなら、この首を差し出していいかなんて思った瞬間。三成の目には儂は映っていなかった。

儂を見た上で拒否したのなら、見てくれる迄待てたのかもしれない。だが、三成はこちらを見てもいなかった。三成がこちらを見てもくれない事に癇癪を起こす儂は子供のようだ。自分で壊しておきながら泣き喚く聞き分けのない童子そのものだ。

三成が欲しくて欲しくて堪らなかったのに、自分で三成を殺してしまった。

崩れ落ちていく三成を見て我に返ったが既に遅い。どんどんと失われる三成の体温に生きているこちらの身がすくむ思いだった。自分が生きていることよりも三成が死んでいく様が恐ろしくなった。

息を吹き返してはくれないかと必死で三成に縋るが、みるみるうちに蒼白くなっていく身体に成す術は無い。いくら呼んでも二度と儂の名前を呼んでくれる事はなかった。

目が熱くなる。目の前が見えない。何も聞きたくない。儂の名前を呼ぶな儂は三成以外からは呼ばれたくない。





三成から名前を呼ばれなくなってから、儂は誰にも名前を呼ばせなかった。名前を呼んでいいのは三成だけだ。

儂は三成を失った寂しさを紛らわすように激務に没頭した。だがどんなに政務をこなしてもどんなに女を抱いてみても何も感じなかった。

三成の名前を誰にも呟いて欲しくないが為に三成の事は厳密に口にしない様に公言した。三成の名前を語った者は即刻打ち首にした。三成の事なんて何もわからない癖に悪人呼ばわれされるのに酷く虫唾が走る。三成の名前は儂だけの物だ。

三成はあんなにも綺麗だったのに。儂なんかよりもずっと高潔だったのに。三成は儂からすり抜けて逝ってしまった。

悲しくて悲しくて自分が許せなくて時折命を絶とうとした。その度に家臣に見付かり阻まれる。

もう、疲れた。三成のところに行きたい。

はやく死なせて欲しい。




あの戦場で三成が儂に言った事を思い出す。

『私を殺せ家康』



三成の気持ちが本当に分かった気がした。




何故、こんな事をしてしまったのだろう。




平和の世で三成と共に生きたかっただけなのに。





「儂が、あの時、死んでいれば良かったな」



儂でなくても、家臣の誰かが平和の世を作ってくれたのではないか、そう思えてきた。



何故なのだろう。





いくら問いかけても答えは見付からなかった。
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