家康視点多し。
特に記述が無ければ、関ヶ原になります。他武将も登場する場合には割合が多ければ記述。
関ヶ原、主に家三で小説、たまに絵。史実ネタとその逸話からの独自解釈、捏造改変など混ぜてたり。
基本はゲーム設定に色付け。男前が目標。シリアスで戦国設定濃い目。転生、現代あり。
合戦描写が好きな管理人です。



萩に猪

   閑話  ●揺籃
「しし狩に行かないか?」

「しし狩?」

不機嫌そうな声で三成は返事を返す。

ぼたん鍋はこの時期はとても美味だ、などと家康は三成に声をかけてきた。

「あいにく腹は空いていない」

「うーん、三成はそうかもしれんが家臣たちは食べるだろう?」

家康は引き下がらない。

三成は不機嫌が増す。

「どういう事だ。私が臣の為に獲物をとって来いとでも言うのか」

明らかに失望の声色の三成。それでも家康は食い下がって来る。

呆れて白い顔で家康を睨みつけてやる。

家康の気持ちは三成に届いていない。三成には回りくどい言い方ははっきり言って無駄だと悟って家康は焦った。

「三成の家臣も誘って皆でどうだ?」

苦し紛れに咄嗟に思いつきを口にしてみた。

「大勢で騒いでどうする。逃げてしまうではないか」

三成の指摘に項垂れかけた。

「随分と楽しそうなんだねえ、しし狩かい?」

家康が大きな声で騒いでいた為か通りかかった半兵衛が顔を出す。

「半兵衛殿」

助け船が来た。運良く話題が広がる予感に家康は胸を撫で下ろす。

「ところで家康くん。どんな方法で狩るつもりなのか教えてくれるかい?」

家康を試すような視線。家康は構わず話す。

「種子島や設置型の罠は使わない。儂と三成は狩りには直接は参加しない。手練の部下ではつまらんな。まだ半人前の家臣だけで狩りをさせる。身に付けている武器だけで仕留めさせるつもりだ」

「家康くんは面白い事を考えるんだねえ。うん、いいかもしれないね。三成くん、家康くんと一緒に行っておいでよ」

「ですが半兵衛様」

「家康くん。猪を使って軍事訓練かな?いい案だと思うよ。道場で篭っているよりも山間で足腰を使って鍛えられて獲物を食べる。滋養もふんだんだし兵たちの健康も士気も高まるね」

半兵衛の言葉に家康のしし狩の意図がようやく三成に理解出来た。
訓練込みであれば三成には拒否権も何も無い。


家康の提案したしし狩はまさしく戦だった。
猪を探す為の鷹や犬は一切伴わない。
探させる手順はまるで忍を斥候に出す指示だ。
陣形を取って猪を追い倒す。
相手が人ではない為動きが読みにくい。
人より背丈の低い獣を狙うのも困難だ。
部下たちは汗だくで獲物を狙う。


「ところで、何故猪なのだ」

三成は家康への対抗心で部下に指示を飛ばしながら家康に問いかけた。

「農民たちが今年は猪が増えて田畑に被害が出ていると聞いてなあ。猟師たちも居る事には居るが、手が足りないそうでな。だからいい機会だと思ったんだ。皆で猪を囲えば親しくも出来るだろう?」

(何時の間にそんな情報を。いや、それよりもその状況を生かそうとは思いも付かなかった)

家康の誰にでも親しくする性分は些細な情報も難なく得る事が出来、状況を転じる知恵がある。

秀吉や半兵衛、三成であれば害獣の発生などは単に駆除のみで終わっていただろう。

家康の物言いが和やかなのでつい忘れてしまうがその内情は実利で溢れていた。

親睦と兵の鍛錬、兵の健康、自身の統括能力の鍛錬、地形把握、外界に出る事で常に新しい情報を吸収するという恐ろしい思考。家康は実に頭が働いている。

三成は改めて家康を見た。

「ん?どうかしたか?」

家康の朗らかな笑顔。

猪美味かったぞ、三成も食べたら良かったのに、とぼやく家康。

「狸面だな、と改めて見ていた。貴様も鍋に入れてやろうかと」

「ええ?!それは酷いぞ三成!!」

「嗚呼、確かに酷いな。とても不味そうだ」

「えっ!!!」

言ってから即座に訂正した三成に家康は更に衝撃を受けた。

「・・・面白いな貴様は」

今度は三成の言葉に虚を突かれる。途端に笑顔になる家康。

「三成が楽しく居てくれると儂は嬉しくなるな」

「・・・まあ、悪くは無い」

「本当か!」

満面の笑みを浮かべる家康に三成は満更でも無いと薄く笑った。
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