家康視点多し。
特に記述が無ければ、関ヶ原になります。他武将も登場する場合には割合が多ければ記述。
関ヶ原、主に家三で小説、たまに絵。史実ネタとその逸話からの独自解釈、捏造改変など混ぜてたり。
基本はゲーム設定に色付け。男前が目標。シリアスで戦国設定濃い目。転生、現代あり。
合戦描写が好きな管理人です。
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特に記述が無ければ、関ヶ原になります。他武将も登場する場合には割合が多ければ記述。
関ヶ原、主に家三で小説、たまに絵。史実ネタとその逸話からの独自解釈、捏造改変など混ぜてたり。
基本はゲーム設定に色付け。男前が目標。シリアスで戦国設定濃い目。転生、現代あり。
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八
黒点
懐かしい城。今は主を失った城。佐和山。三成の城。大坂の三成の屋敷と同様質素であるが此処が本来の三成の場所。此処に訪れる事は数度ではあったが此処で過ごす三成は穏やかだった。
馬を適当に繋ぎ止めて中に入る。
三成が好んだ花木が家康の目に沁みる。
美しい白砂を踏みしめて上がる。
透き通った手漉きの和紙の襖に手をかける。音も無く開けると記憶の中のまま家康を出迎えた。
「・・・っ」
薄くなった香の香りが家康の鼻を掠める。
胸の痛みが増したが意を決して一歩二歩畳を踏む。
少ない調度品が飾られた棚に軽く笑う。
「本当に、三成らしい」
棚に手を添える。懐かしさに喪失感が助長する。額をコツンと当てても耐えられず、ズルズルと膝から崩れ落ちた。
畳にすっかり身体を預けて伏せった。己の鼓動が煩い程耳に響いてくる。
伏せたまま落ち着かない呼吸を上げて視線を彷徨わせると、奥の板間に何か違和感を感じた家康は震える身体を叱咤しつつ立ち上がる。傍に寄ってみると微かな隙間があった。何気なく触れると板が跳ね上がった。
「あ・・・」
板の下に、藤色の敷物が現れた。引き上げてみると、漆器の中に本と書が置かれていた。
手にとってみる。紛うこと無き三成の書体。開くか開くまいか。三成が何を思って綴ってあるのか知りたいのに怖い。今でも家康の脳裏には三成の姿が焼き付いている。三成の許し無く開封しても良いものだろうか。持ったまま葛藤する。だが焦れて苛立つ。書が手から滑って落ちる。
「しまっ・・・」
大切な三成の書を拾おうとした家康だったが、裏返った書を見て息が詰まる。
家康の視線の先には、家康の名が記されていたからだ。その意味を知って、改めて恐る恐る手に取る。
三成が、家康へ宛てた手紙。緊張で手が震える。破ってしまわない様にそっと開封する。
バラっと横に流す。質の良い紙に乗った墨が踊っている。
『こうして筆を取ってみたが、果たして何から書くべきか。貴様には言いたい事が山程ある。だのに、今もこうして迷っている。これを貴様が手に取っているという事は私はもう生きていまい。遺言など貴様にくれてやるのは悔しいのだが、それでも最後に貴様に思い知って貰う事にする。この書と共にあったものは私が綴ったものだ。生きて戻れるかどうかも分からぬから焼き捨ててしまおうとも思ったが、貴様にくれてやる。あまりにも貴様に言いたい事が有り過ぎて書では間に合わん。』
そこ迄読んで家康は三成が綴ったという本に目を落とす。
『この手記は、個人的な感情を綴るだけの物だ。半兵衛様にもあまつさえ秀吉様へも報告すべき事柄ではない。いや、本来であれば、仔細は包み隠さず報告すべきと分かってはいるが、私の私情に塗れたこれはあの御二方の手を煩わせるばかり。ならばこれは私の胸の内にのみ秘めておく物とする。』
こんな書き出しに家康は多少なりとも驚いた。あの三成が私情で手記を付けていた。
手記というならば、日常の事が書かれているのだろう。残してくれた三成に感謝しつつ恐ろしくもある手記の続きを繰る。
『初めに断っておくが、こんな物を付けるのは初めてだ。それも、あの男の所為だ。秀吉様に弓引いた不届きな輩。半兵衛様が手放しで褒め称えるあの男。名を徳川家康と言ったか。忌ま忌ましい。御二方のお声掛けが無ければ今頃は斬滅してやったものを。』
家康は苦笑いをする。あの時の三成の顔は忘れない。
『何故だ。何故家康は私に色々突っかかって来る。いやそんな輩は今迄ごまんと居たがあれは類を見ないしつこさだ。私の何が気に喰わないのか知った事では無い。』
『今日も家康がしつこい。何故か私の寝食の事に迄口を出して来た。私に構うな。』
『成程。半兵衛様が言うだけの事はある。家康も使えるのだな。だが、相変わらず私に付き纏ってくるのが難点だ。』
『家康は不思議な男だな。あれの力量と采配があれば今更ながら豊臣に下った理由が分からない。私ならばあのまま全力でぶつかって果てたものを。益々奴の事が分からない。』
『家康の考えが分からない。何を考えている。』
『家康は私と同じ気持ちで居てくれていると信じて良いのだろうか。』
『近頃家康の視線ばかり感じる。それなのに用向きを問うと何でも無いと言う。一体何だ。』
『私にさしたる用事も無かったから家康の誘いに乗ってやった迄。家康が子供のようにはしゃいでいた。そんなに嬉しいものだったか?よく分からない。』
『家康が怪我をしてきた。私は掠り傷すらも追って居ない。だから私は関係ない筈なのに、何故だか胸が酷く痛い。落ち着かない。むしろ怪我人など足手まといな筈で、だから、家康に無能だと罵る言葉が出る筈なのだが、それが出来無かった。何故怪我した家康を見て心が痛むのだろう。』
『私はどうにかなってしまったんだろうか。家康の顔が見れないと苛々する。見れたら見れたで苛々する。この気持ちはなんだ?』
『訳の分からない感情が恐ろしい。本当は言う筈では無かったのに何故あんな言葉を吐いたのか自分でも分からない。私は私を嫌悪する。』
『私は家康を好きになったのだな。』
『家康の声が心地良い。家康の視線に安堵する。』
『問われたから答えた。それだけだ。』
『私は今、満たされている。』
『家康は何故また同じ事を問う?私の意思は変わらない。私は、豊臣なのだ。』
『家康は何処か体調でも良くないのか時折暗い顔をしている。下らん事で嘘を付くな。具合が悪いなら無理するな。目障りだ。』
『最近家康の様子がおかしい。私に隠し事でもしているのか。そんなに頼りないのか私は』
手記はここで途切れていた。
恐らく己が秀吉を討ったから、それ以降書く事が出来無かったんだろう。
真白な頁が続く。
もう、褪せたと思っていたあの時の慟哭が鮮明に蘇って来た。
苦痛で顔が歪む。装束を固く皺が出来る程に握り潰した。
はらりと涙が零れて書に落ちた。波打ってしまった紙の下が黒い。止まっていた手を動かす。まだ何か書かれていたのだ。
『もう書く事は無い、と思っていたが。やはりそうもいかないらしい。何かをしていないと狂ってしまいそうになる』
『私は家康を許せない。許してなるものか!!!』
『私は、永遠に続く物だと信じていた。家康を信じていた。なのに何故だ?!!家康も私を見てくれていたのでは無かったのか?もう分からない。何も分からない!!!信じられるものか!!!』
『家康!私を見ろ!!!何故何も言わない!!!答えろ家康!!!!!』
『家康。貴様が憎い。憎くて仕方無い。それなのに、私は・・・貴様を、欲している。』
馬を適当に繋ぎ止めて中に入る。
三成が好んだ花木が家康の目に沁みる。
美しい白砂を踏みしめて上がる。
透き通った手漉きの和紙の襖に手をかける。音も無く開けると記憶の中のまま家康を出迎えた。
「・・・っ」
薄くなった香の香りが家康の鼻を掠める。
胸の痛みが増したが意を決して一歩二歩畳を踏む。
少ない調度品が飾られた棚に軽く笑う。
「本当に、三成らしい」
棚に手を添える。懐かしさに喪失感が助長する。額をコツンと当てても耐えられず、ズルズルと膝から崩れ落ちた。
畳にすっかり身体を預けて伏せった。己の鼓動が煩い程耳に響いてくる。
伏せたまま落ち着かない呼吸を上げて視線を彷徨わせると、奥の板間に何か違和感を感じた家康は震える身体を叱咤しつつ立ち上がる。傍に寄ってみると微かな隙間があった。何気なく触れると板が跳ね上がった。
「あ・・・」
板の下に、藤色の敷物が現れた。引き上げてみると、漆器の中に本と書が置かれていた。
手にとってみる。紛うこと無き三成の書体。開くか開くまいか。三成が何を思って綴ってあるのか知りたいのに怖い。今でも家康の脳裏には三成の姿が焼き付いている。三成の許し無く開封しても良いものだろうか。持ったまま葛藤する。だが焦れて苛立つ。書が手から滑って落ちる。
「しまっ・・・」
大切な三成の書を拾おうとした家康だったが、裏返った書を見て息が詰まる。
家康の視線の先には、家康の名が記されていたからだ。その意味を知って、改めて恐る恐る手に取る。
三成が、家康へ宛てた手紙。緊張で手が震える。破ってしまわない様にそっと開封する。
バラっと横に流す。質の良い紙に乗った墨が踊っている。
『こうして筆を取ってみたが、果たして何から書くべきか。貴様には言いたい事が山程ある。だのに、今もこうして迷っている。これを貴様が手に取っているという事は私はもう生きていまい。遺言など貴様にくれてやるのは悔しいのだが、それでも最後に貴様に思い知って貰う事にする。この書と共にあったものは私が綴ったものだ。生きて戻れるかどうかも分からぬから焼き捨ててしまおうとも思ったが、貴様にくれてやる。あまりにも貴様に言いたい事が有り過ぎて書では間に合わん。』
そこ迄読んで家康は三成が綴ったという本に目を落とす。
『この手記は、個人的な感情を綴るだけの物だ。半兵衛様にもあまつさえ秀吉様へも報告すべき事柄ではない。いや、本来であれば、仔細は包み隠さず報告すべきと分かってはいるが、私の私情に塗れたこれはあの御二方の手を煩わせるばかり。ならばこれは私の胸の内にのみ秘めておく物とする。』
こんな書き出しに家康は多少なりとも驚いた。あの三成が私情で手記を付けていた。
手記というならば、日常の事が書かれているのだろう。残してくれた三成に感謝しつつ恐ろしくもある手記の続きを繰る。
『初めに断っておくが、こんな物を付けるのは初めてだ。それも、あの男の所為だ。秀吉様に弓引いた不届きな輩。半兵衛様が手放しで褒め称えるあの男。名を徳川家康と言ったか。忌ま忌ましい。御二方のお声掛けが無ければ今頃は斬滅してやったものを。』
家康は苦笑いをする。あの時の三成の顔は忘れない。
『何故だ。何故家康は私に色々突っかかって来る。いやそんな輩は今迄ごまんと居たがあれは類を見ないしつこさだ。私の何が気に喰わないのか知った事では無い。』
『今日も家康がしつこい。何故か私の寝食の事に迄口を出して来た。私に構うな。』
『成程。半兵衛様が言うだけの事はある。家康も使えるのだな。だが、相変わらず私に付き纏ってくるのが難点だ。』
『家康は不思議な男だな。あれの力量と采配があれば今更ながら豊臣に下った理由が分からない。私ならばあのまま全力でぶつかって果てたものを。益々奴の事が分からない。』
『家康の考えが分からない。何を考えている。』
『家康は私と同じ気持ちで居てくれていると信じて良いのだろうか。』
『近頃家康の視線ばかり感じる。それなのに用向きを問うと何でも無いと言う。一体何だ。』
『私にさしたる用事も無かったから家康の誘いに乗ってやった迄。家康が子供のようにはしゃいでいた。そんなに嬉しいものだったか?よく分からない。』
『家康が怪我をしてきた。私は掠り傷すらも追って居ない。だから私は関係ない筈なのに、何故だか胸が酷く痛い。落ち着かない。むしろ怪我人など足手まといな筈で、だから、家康に無能だと罵る言葉が出る筈なのだが、それが出来無かった。何故怪我した家康を見て心が痛むのだろう。』
『私はどうにかなってしまったんだろうか。家康の顔が見れないと苛々する。見れたら見れたで苛々する。この気持ちはなんだ?』
『訳の分からない感情が恐ろしい。本当は言う筈では無かったのに何故あんな言葉を吐いたのか自分でも分からない。私は私を嫌悪する。』
『私は家康を好きになったのだな。』
『家康の声が心地良い。家康の視線に安堵する。』
『問われたから答えた。それだけだ。』
『私は今、満たされている。』
『家康は何故また同じ事を問う?私の意思は変わらない。私は、豊臣なのだ。』
『家康は何処か体調でも良くないのか時折暗い顔をしている。下らん事で嘘を付くな。具合が悪いなら無理するな。目障りだ。』
『最近家康の様子がおかしい。私に隠し事でもしているのか。そんなに頼りないのか私は』
手記はここで途切れていた。
恐らく己が秀吉を討ったから、それ以降書く事が出来無かったんだろう。
真白な頁が続く。
もう、褪せたと思っていたあの時の慟哭が鮮明に蘇って来た。
苦痛で顔が歪む。装束を固く皺が出来る程に握り潰した。
はらりと涙が零れて書に落ちた。波打ってしまった紙の下が黒い。止まっていた手を動かす。まだ何か書かれていたのだ。
『もう書く事は無い、と思っていたが。やはりそうもいかないらしい。何かをしていないと狂ってしまいそうになる』
『私は家康を許せない。許してなるものか!!!』
『私は、永遠に続く物だと信じていた。家康を信じていた。なのに何故だ?!!家康も私を見てくれていたのでは無かったのか?もう分からない。何も分からない!!!信じられるものか!!!』
『家康!私を見ろ!!!何故何も言わない!!!答えろ家康!!!!!』
『家康。貴様が憎い。憎くて仕方無い。それなのに、私は・・・貴様を、欲している。』
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