家康視点多し。
特に記述が無ければ、関ヶ原になります。他武将も登場する場合には割合が多ければ記述。
関ヶ原、主に家三で小説、たまに絵。史実ネタとその逸話からの独自解釈、捏造改変など混ぜてたり。
基本はゲーム設定に色付け。男前が目標。シリアスで戦国設定濃い目。転生、現代あり。
合戦描写が好きな管理人です。
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特に記述が無ければ、関ヶ原になります。他武将も登場する場合には割合が多ければ記述。
関ヶ原、主に家三で小説、たまに絵。史実ネタとその逸話からの独自解釈、捏造改変など混ぜてたり。
基本はゲーム設定に色付け。男前が目標。シリアスで戦国設定濃い目。転生、現代あり。
合戦描写が好きな管理人です。
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十
黒点
「死者を蘇らせる方法・・・」
たまたま、日課の薬の調合の為に書物を大量に取り寄せていた中にその一文が記述されていた。鎮痛や痺れを緩和させる方法の中に心肺停止した際の効用などの知識の隅に、ひっそりと書かれていた。以前の家康ならば半信半疑以下で読み飛ばしていたものだ。
指揮を取りつつ前線で戦場を駆け巡っていた家康にとって、戦地で散っていった仲間も多く、喪失感はあった。亡くなる事は悲しい。今迄の家康であったならば、死する事は致し方無い事、と割り切っていた。己も死する身。死は悲しい物であるが、嘆くだけでは何も解決しないと身に染みていた。己は死ね無いから、生きる事に必死であったから、死者を悼む事はあっても立ち止まる事はしていなかった。
だが。
今の家康は揺れに揺れ動いている。我が身よりも大切にしたいと思った人を自らの手で死なせた。殺した。他に方法があっただろうに心に蓋をしていた。
三成の死を受け入れたわけでは無い。受け入れられていない。毎夜夢に見る。三成と過ごした日々の夢は一時幸せな気分に浸れるが、起きた時の絶望感。三成を殺した時の夢の恐怖。生きている心地がまるでしない。
家康は仏教も神道も軽んじてはいなかったが、死者が蘇る、という事については信憑していない。
(生き返るものなら誰も死にはするものか)
悲しい思考に一層落ち込む。
(生き返る・・・)
「口寄せ!!!」
巫女が良く行うものだ。巫女といえば、海神の巫女なら何か知っているか?いや、巫殿よりも・・・イタコの方が死者そのものの蘇生が出来た筈。ならば、南部晴政を訪ねてみるか。
「・・・いや、どれも駄目だな・・・」
仮にも、天下人である。その道に明るい者を探し出すのは容易い。だがその反面口封じは困難となる。付け込まれる。本気を出せば出来ない事など何も無いが、戦火を繰り返しては意味が無い。
「何か・・・ある、筈だ・・・」
深く深く思考を沈める。あらゆる手法を計算する。
「ッ!!!」
激痛に我に返る。思い切り指の皮膚を食い破っていた。鮮血が流れる。眉をしかめつつ懐紙で乱暴に拭う。
「・・・そうだ。お市殿!」
かつて同盟を結んでいた織田。その信長の妹。信長が討たれた際に生死不明になっていた市だが、関ヶ原の合戦の為の進軍中に出会う事が出来た。市は変わり果てていた。儚げではあったものの笑顔もあった彼女を知っていただけに己の名前すら覚えていない事に驚きを隠せなかった。夫・長政の死が変えてしまったのだろう。市を取り巻く瘴気は魔王と呼ばれていた信長に勝るとも劣らない。正気を無くした市が纏っていた異形は恐らく、死者の手。ならば、根の国に繋がっているだろう。
かつての織田の領地に家康は足を向けていた。
市の姿を探す。崩壊した城の瓦礫の中で地べたに彼女は座り込んでいた。
「お市殿」
家康が呼び掛けると市はゆっくりとこちらへ顔を向けた。
「こんにちは。光色さん」
「お市殿。実は、貴方に訊ねたい事があるのだ」
「市に?」
「お市殿は・・・亡くなった者の声とか聞こえたりはしないだろうか?」
「光色さん。泣いているの?辛いの?可哀想。・・・そう、辛いのね」
家康は苦笑いを浮かべる。表面上は泣いてはいないが、言い当てられて苦笑するしかない。
「闇色さん、あんなに綺麗だったのに。光色さん、何故闇色さんから奪ったの?」
市は痛いところを突く。
「ワシにも分からん。本心では無かった筈なのにだ。今更だが、三成に・・・会いたい」
「闇色さんね、泣いているの。根の国にも行けないのよ。苦しんでるわ。光色さんは狡い人なのね」
「狡い・・・か。そうだな。その通りだ」
「・・・そこに、居るの。悲しそうな顔で。光色さんを見ているの」
市の声に音速で振り返る。市の視線の先を見る。
「み、「駄目。行かないで。行っては駄目」
市の制止の腕。振りほどくのは容易。だが、その目を見てゾッとした。
「闇色さんは望んでいないの。そっとしておいて?ね?」
市の空気が澱んでいる。一旦引こう。手掛かりを得ただけでも今回は良しとしよう。家康は市を連れてその場を後にした。
たまたま、日課の薬の調合の為に書物を大量に取り寄せていた中にその一文が記述されていた。鎮痛や痺れを緩和させる方法の中に心肺停止した際の効用などの知識の隅に、ひっそりと書かれていた。以前の家康ならば半信半疑以下で読み飛ばしていたものだ。
指揮を取りつつ前線で戦場を駆け巡っていた家康にとって、戦地で散っていった仲間も多く、喪失感はあった。亡くなる事は悲しい。今迄の家康であったならば、死する事は致し方無い事、と割り切っていた。己も死する身。死は悲しい物であるが、嘆くだけでは何も解決しないと身に染みていた。己は死ね無いから、生きる事に必死であったから、死者を悼む事はあっても立ち止まる事はしていなかった。
だが。
今の家康は揺れに揺れ動いている。我が身よりも大切にしたいと思った人を自らの手で死なせた。殺した。他に方法があっただろうに心に蓋をしていた。
三成の死を受け入れたわけでは無い。受け入れられていない。毎夜夢に見る。三成と過ごした日々の夢は一時幸せな気分に浸れるが、起きた時の絶望感。三成を殺した時の夢の恐怖。生きている心地がまるでしない。
家康は仏教も神道も軽んじてはいなかったが、死者が蘇る、という事については信憑していない。
(生き返るものなら誰も死にはするものか)
悲しい思考に一層落ち込む。
(生き返る・・・)
「口寄せ!!!」
巫女が良く行うものだ。巫女といえば、海神の巫女なら何か知っているか?いや、巫殿よりも・・・イタコの方が死者そのものの蘇生が出来た筈。ならば、南部晴政を訪ねてみるか。
「・・・いや、どれも駄目だな・・・」
仮にも、天下人である。その道に明るい者を探し出すのは容易い。だがその反面口封じは困難となる。付け込まれる。本気を出せば出来ない事など何も無いが、戦火を繰り返しては意味が無い。
「何か・・・ある、筈だ・・・」
深く深く思考を沈める。あらゆる手法を計算する。
「ッ!!!」
激痛に我に返る。思い切り指の皮膚を食い破っていた。鮮血が流れる。眉をしかめつつ懐紙で乱暴に拭う。
「・・・そうだ。お市殿!」
かつて同盟を結んでいた織田。その信長の妹。信長が討たれた際に生死不明になっていた市だが、関ヶ原の合戦の為の進軍中に出会う事が出来た。市は変わり果てていた。儚げではあったものの笑顔もあった彼女を知っていただけに己の名前すら覚えていない事に驚きを隠せなかった。夫・長政の死が変えてしまったのだろう。市を取り巻く瘴気は魔王と呼ばれていた信長に勝るとも劣らない。正気を無くした市が纏っていた異形は恐らく、死者の手。ならば、根の国に繋がっているだろう。
かつての織田の領地に家康は足を向けていた。
市の姿を探す。崩壊した城の瓦礫の中で地べたに彼女は座り込んでいた。
「お市殿」
家康が呼び掛けると市はゆっくりとこちらへ顔を向けた。
「こんにちは。光色さん」
「お市殿。実は、貴方に訊ねたい事があるのだ」
「市に?」
「お市殿は・・・亡くなった者の声とか聞こえたりはしないだろうか?」
「光色さん。泣いているの?辛いの?可哀想。・・・そう、辛いのね」
家康は苦笑いを浮かべる。表面上は泣いてはいないが、言い当てられて苦笑するしかない。
「闇色さん、あんなに綺麗だったのに。光色さん、何故闇色さんから奪ったの?」
市は痛いところを突く。
「ワシにも分からん。本心では無かった筈なのにだ。今更だが、三成に・・・会いたい」
「闇色さんね、泣いているの。根の国にも行けないのよ。苦しんでるわ。光色さんは狡い人なのね」
「狡い・・・か。そうだな。その通りだ」
「・・・そこに、居るの。悲しそうな顔で。光色さんを見ているの」
市の声に音速で振り返る。市の視線の先を見る。
「み、「駄目。行かないで。行っては駄目」
市の制止の腕。振りほどくのは容易。だが、その目を見てゾッとした。
「闇色さんは望んでいないの。そっとしておいて?ね?」
市の空気が澱んでいる。一旦引こう。手掛かりを得ただけでも今回は良しとしよう。家康は市を連れてその場を後にした。
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