家康視点多し。
特に記述が無ければ、関ヶ原になります。他武将も登場する場合には割合が多ければ記述。
関ヶ原、主に家三で小説、たまに絵。史実ネタとその逸話からの独自解釈、捏造改変など混ぜてたり。
基本はゲーム設定に色付け。男前が目標。シリアスで戦国設定濃い目。転生、現代あり。
合戦描写が好きな管理人です。



   暗れ惑う思い   
三成は常以上に悪態を付いた。自分でも嫌悪する程の悪態だと自覚はした。

そう自覚はしても三成は家康はまたいつものように、仕方が無いなあ、と暢気な言葉と声色が降ってくるものと思っていた。だが家康の顔から表情が消えた。

やはり流石の家康もここ迄されれば諦めるだろうと三成はタカをくくった。

「家康。もう分かっただろう?いいから去れ」

三成は内心家康への一方的な悪態に心を痛めたものの家康から目を背けた。

途端、家康が三成の腕を思い切り引っ張り壁に叩き付ける。

「っっ」

突然の衝撃に三成は咽る。

痛みにしかめた顔を家康に向けた。

「三成」

家康の口から出た声に三成は固まった。

怒りでも無く悲しみでも無く。低く身体中が泡立つような声色。

感情が欠落した声を耳にして三成は背筋が凍る。家康の瞳は昏い夕闇の色を灯していた。

本能的に三成は後ずさる。家康の瞳は三成の姿を映してはいるが家康は三成を見ていない。

家康に睨まれたわけでは無い。それなのに、嫌な汗が伝い落ちる。

こんな家康の顔は今迄見た事が無い。

空気が生暖かく澱んでいる。まだ昼だというのに。先程迄は暑い位だったというのに。感じる空気の温度すらおかしくなってしまう。

家康が無言のまま三成へと一歩を踏み出す。

三成は家康が恐ろしくて一歩下がる。こんな感情は今迄感じた事が無い。死と隣り合わせだった筈のあの日常ですら心地良さを感じていたのに。関ヶ原で向けられた金色の家康の瞳だって怖いとも思わなかったのに。

家康が薄ら笑いを浮かべた。

三成の呼吸が止まる。家康は、こんな顔をする男だったか?

くつくつと気味の悪い笑いをする家康がおぞましくなる。

「三成」

焦点の定まらない家康の昏い瞳。緩やかに伸ばされた手は三成の首に触れる。

「死んでくれ」

「?!」

三成は咄嗟に半歩下がって家康の手から首を庇うように手を前に出す。
家康は予測通りとでもいうのかそのまま伸ばした腕で三成の首をギリギリと圧迫しに掛かる。

「く・・・」

自分の首と家康の手の間に己の手を差し入れる事は出来たものの、家康の膂力に敵う筈も無い。緩慢に酸素が失われる苦しさに身体が震える。

「三成、三成」

まるで睦言のように優しい声で家康は三成の首を締める。

徐々に締まる喉が悲鳴を上げる。

「いえ・・・康・・・」

意識が朦朧として来た。三成はぼんやりと霞む視界で家康を見る。

(嗚呼・・・でも・・・これも悪く無い)
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