家康視点多し。
特に記述が無ければ、関ヶ原になります。他武将も登場する場合には割合が多ければ記述。
関ヶ原、主に家三で小説、たまに絵。史実ネタとその逸話からの独自解釈、捏造改変など混ぜてたり。
基本はゲーム設定に色付け。男前が目標。シリアスで戦国設定濃い目。転生、現代あり。
合戦描写が好きな管理人です。



   隔靴掻痒 かっかそうよう  ●揺籃
「何故貴様、あんな事をした」

大坂に帰って三成から開口一番の言葉がこれだった。

「あんな面倒な陣にせずに貴様だけで解決出来ただろう」

三成の指摘はもっともだ。

「三成と一緒に戦がしたい」

「・・・馬鹿か」

満面の笑顔で告げられて三成の気が失せた。

呆れ顔の三成は視線を落とす。

「・・・家康。それは何だ」

三成は気付いた。三成の視線の先には、血の滲んだ家康の手。隠す様にやや後ろに下げられていた為三成に怒りが現れる。

「え?何の事だ?」

「とぼけるな!」

勢い良く家康の手首を掴まえて上に上げる。痛々しい手が三成の前に晒される。

「勝手な事をするな!!!」

勝手に戦の手助けをされて自分は無傷。手助けした者が手傷を追った事に三成は怒っている。

「だからバチなんだろうな。三成が怒る事でもないぞ」

指摘を受けた家康は三成を真っ直ぐ見る。

「・・・ッ。貴様、こっちに来い」

「えっ?!おい?」

突然三成に手を引かれたまま連行される家康。有無を言わさず無言のまま三成は家康を連れ回す。

着いたのは三成の私室。

「ほら。座れ家康」

ぶっきらぼうに家康に告げる三成。

三成の意図が分った家康は腰を落とす。

「三成ありがとう」

「勘違いするな。貴様が勝手に怪我をすると私の落ち度だと思われるのが癪なだけだ」

三成は飾り気の無い棚から軟膏を取り出し家康の手に擦り込んでいく。三成の言葉は冷たいが声色はどこか労わりのある音に聞こえた。細い三成の指が家康の甲を撫でていく。体温の低い指に思わず開いてる手を重ねた。

「?どうした家康。痛かったか」

怪訝な声で訊ねる。

「いや。随分と冷えてしまっていると思ってな」

三成の手をそっと包む。

「貴様が暑苦しいだけだろう」

三成は軽く家康の手を振り払って手当てを再開する。さらしを巻き終える。

「・・・どうせ、腹が減っているんだろう?」

「え?」

さっさと追い返されると思った家康は思わず聞き返したが三成は無言。そのまま三成は立ってどこかへ行ってしまった。

追いかけようにも実はかなりの深手で手を付いて立ち上がるのが辛い。また去り際の三成の顔は付いてくるなといっていた。無理に追いかけて三成の機嫌を損ねるのは良くない。それにどうやら食事の用意でもしてくれるみたいであったので大人しく三成の帰りを待つことにした。

三成の私室に長く居られる機会もあまりない。むしろ三成から通される事自体が稀だ。いや少しずつだが以前よりは三成の鋭さが丸くなっている気もする。信頼してきてくれていると自惚れてもいいのだろうか。

質素過ぎる部屋を見回す。物という物が殆ど無い。不便だと思わないのだろうか。

半刻程経過したとき三成が戻ってきた。

暖かい土鍋を抱えた三成が家康の傍らに座る。

美味しそうなおじやが土鍋一杯に詰まっていた。

「特別だからな」

器に盛って家康の前に差し出す。

家康の手の傷を配慮して箸を使わない食べ物にした三成の心遣いに感謝する。

それでも利き手が痛みで上手く使えない。

「貸してみろ」

ぎこちなく掬っている家康から椀を取り上げ三成は匙でおじやを取る。

「ん」

家康の眼前に匙が迫る。

家康は何かを言おうとして止めた。三成の好意を受け取る。三成は家康の食事の速さに文句を言いつつも付き合っていた。
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